おなじみのチョコレート菓子キットカットは1935年、英ヨークシャーの生まれである。第二次大戦中、チャーチル政権が「廉価で体によい」「ひとかじりで2時間行軍できる」と推奨し、国民的なおやつになった。

 サッチャー政権下の80年代、その発売元をスイス企業ネスレが力ずくで買収する。「英国の味を守れ」と反対するデモが起き、チョコ戦争と呼ばれた。肥満対策を掲げるブレア政権は、もうチョコを食べるよう国民に薦めたりはしない。

 そんなキットカットが今月、本場で久しぶりに話題を呼んでいる。英紙やBBCが相次いで「わが国伝統のチョコが日本で受験生のお守りとして大人気」と報じたからだ。「かつて日本の受験生は縁起をかついでカツ丼を食べたものだが、キットカットがそれに取って代わった」。若干、大げさではある。

 ネスレジャパンは、受験生に好評なのはだじゃれのおかげと言う。何年か前、九州の受験生が「キットカットできっと勝つとお」と言い始めた。ネットに乗ってたちまち全国区の流行になった。

 ここ一番の試験でお守りにすがるのは、日本の受験生だけではない。米国ではうさぎの足、インドでは象の顔をした神、トルコでは青い目玉の魔よけが有名だ。どれも土俗的な信仰や伝承を感じさせる。

 これらに比べると、日本で流行している受験のお守りは世俗的である。キットカットのほかに、カールを食べて試験に受かーる。キシリトールガムできっちり通る。伊予柑(いよかん)食べればいい予感。本番前の食べすぎにはくれぐれもご用心を。