「国民の皆さん。私は先般、日曜日に独立記念館を訪れました」。ソウルで盧武鉉(ノムヒョン)?韓国大統領が1日に行った演説の一節だ。記念館はソウルからかなり南の天安市にある。

 以前、そこを訪ねたことがある。朝鮮民族の歴史や、支配する日本に抵抗して独立するまでを、七つのパビリオンに展示していた。開館から1年足らずで800万人が来たと係員は言った。人々は「日本の侵略館」に殺到しており、入り口には100メートル近い行列ができていた。

 大統領は、その記念館に行き、ソウルでは、日本に抵抗する「3?1運動」に身を投じて命を落とした「韓国のジャンヌ?ダルク」とも呼ばれる柳寛順(ユガンスン)の記念館で演説した。日本支配の時代を強く思い起こさせる場所をたどっての演説だった。

 それもあってか、日本に対して歴史の清算や謝罪をこれまでにない厳しい口調で求めたという。演説の要旨からは、そう受け取れる。しかし演説の細部を見て、少し違う印象を受けた。

 演説の中程では、日韓関係が相当な進展をしてきたと述べた。過去の村山首相の「痛切な反省と謝罪」や、金大中大統領と小渕首相の「未来志向」の関係構築の確認に触れ、日韓は「運命共同体」とも言った。

 そして「日本の知性に再び訴えます」と述べた。ここでは訴える相手を、政府とも国民ともしていない。「真の自己反省の土台の上で両国の感情的なわだかまりを晴らし、傷を癒やすことを率先しなければならない」と続けた。日本への厳しい言葉の裏に、大統領の悲痛な思いがこもっているように思われた。