やはりこの国では、大地震はどこででも起こると考えていた方がいい。昨日の九州北部を中心とする大きな地震で、改めてその思いを強くした。震源の玄界灘では、これまでは地震活動が弱かったという。

 玄界灘を望む能古島では、作家?檀一雄が晩年を過ごした。高台には、絶筆の句〈モガリ笛 いく夜もがらせ 花ニ逢はん〉を刻んだ碑があるという。隣の志賀島からは、国宝の「漢委奴国王」の金印が出土している。

 こうした古代や海のロマンに彩られた島々の中で、昨日は、何軒もの家が倒壊したすさまじい被害が映し出された島もあった。震源に近く揺れが大きかったのだろう。救援を集中させたい。

 今回の地震は、阪神大震災以来10年ぶりに百万都市を直撃した。福岡では、記録的な大惨事にこそ至らなかったようだが、現代都市の弱さを見せつけられた。窓ガラスの多くが割れた高層ビルがあった。落ちるガラスは凶器となって地上の人々を襲う。近年、大都市には全面がガラス張りのような新しいビルが増えている。在来型のビルともども、揺れに対する備えを再点検してほしい。

 「死者1万3千人。避難者700万人」。先月、首都直下地震について、政府?中央防災会議が被害想定をまとめた。最悪の場合には、経済損失は国家予算をはるかに超える112兆円にもなるという。

 まずは被災地の復旧が第一だが、今回あらわになった弱点を精査し、全国で対策を進めたい。地震は、忘れていても忘れていなくても、そして、前例があってもなくても襲ってくるのだから。