最近の言葉から。「島が壊れた。泣きたいよ」。福岡沖地震で多くの民家が崩れた玄界島で、漁協役員がもらした。漁期のさなかに事実上の全島避難が続き、漁業の島が呻吟(しんぎん)している。

 地下鉄サリン事件から10年たった。「私たち被害者はずっと置いてきぼりのまま、時間が止まっています」。出勤途中に事件に遭い、今も後遺症に苦しむ女性は、国による救済の乏しさを訴える。

 60年前の東京大空襲を、作家の早乙女勝元さんは12歳で経験した。皇居の安否には言及しながら、市民の被害を「其(そ)ノ他」で片付けた大本営発表にこだわる。「『死は鴻毛(こうもう)よりも軽しと覚悟せよ』とは、軍人勅諭の一節だが、民草と呼ばれた国民の命は、鳥の羽よりも軽かったのである」

 ハンセン病問題の検証会議が、隔離の実態を最終報告書にまとめた。「真理子よ そのお前は標本室にはいないのです 真理子よ 今どこにいるのです」。元患者で盲目の詩人、桜井哲夫さんは、堕胎手術で失った娘に詩で呼びかける。標本までもが、ひそかに処分されていた。

 「日本橋の上に高速道路なんぞ通したのは、どこのどいつだって、今だって思ってる」と話す写真家、富山治夫さん(70)は、東京?神田生まれ。江戸っ子の反骨が、ライフワークの社会戯評「現代語感」を支えた。

 『悲しき熱帯』で知られる文化人類学者のクロード?レヴィ=ストロースさん(96)が久々に仏メディアに登場した。今後の予定を問われて言った。「そんなこと、聞くもんじゃないよ。私はもう現代社会の一員ではないのだから」