ゴールデンウイークが終わって、きょうから大学のキャンパスも活気を取り戻す。講義もそろそろ本格化する頃である。

 かつては、英語以外にフランス語やドイツ語を学ぶことは、知的な背伸びをしているようで、大学生になったという実感を持ったものだった。最近は、第二外国語を必修から外す所も出てきて、語学学習の風景もだいぶ変わった。

 都内の私大で第二外国語のスペイン語を教えている知り合いによると、年々辞書を持たない学生が増えているという。毎年、最初の授業で何冊かの辞書を推薦するのだが、今年3回目の授業で尋ねたところ、クラス30人のうち購入したのは3人だった。かなり前なら、外国語を学ぶのに辞書を買うのは常識だった。いまの学生が辞書を買わない理由は「高い」「重い」「引くのが面倒くさい」の三つだという。

 別の私大のベテラン教員は、一昔前のこんな話を教えてくれた。辞書の持ち込み可でフランス語を訳す試験を行ったところ、ある学生は仏和辞典だけでなく、国語辞典も持ち込んだ。訳文に正確さを期するためだった。これまた失われた風景だという。

 いま書店の外国語コーナーをのぞくと、「超やさしい○○語の入門」「10日でマスター」といったようなタイトルの薄っぺらい本であふれている。詳しい文法は省略だ。辞書を買わない学生もこういう本は購入する。

 辞書を片手に難解な原書に挑戦するなんてことは今時、はやらないかもしれない。だが、外国語は地道な努力が習得の基本である。それはいつの時代も変わらない。