その歌が盛んに流れていた時代を知っているわけではないのに、妙に懐かしさを覚える。「とんとんとんからり」で始まる「隣組」も、そんな歌の一つだ。

 その替え歌が、一時は「談合ソング」になっていた。「トントントンカラリと土曜会/扉を開ければ顔なじみ/まわしてちょうだい このニュース/知らせられたり 知らせたり」

 この「土曜会」は、埼玉県内に支店?営業所をもつ総合建設会社(ゼネコン)が加盟する団体だった。92年に、公正取引委員会から、独占禁止法違反で排除勧告を受けた。替え歌は「埼玉土曜会一五周年記念誌」に、会員の作として掲載された。「NHK国民歌謡『隣組』の節でお楽しみ下さい」と添え書きされていた(田島俊雄/山口広『ドキュメント埼玉土曜会談合』東洋経済新報社)。

 あっけらかんとして、談合という意識も、後ろ めたさも見られない。土曜会は解散したが、談合社会の根は深く、今度は、国の橋梁(きょうりょう)工事の談合事件で、検察が捜査を進めている。

 橋は不思議な装置である。こことどこかを今結びつつ、過去や未来のことも思わせる。たもとに立てば、これまでに行き来した人々の足音が聞こえてくるような懐かしさも感じる。しかし、談合でできる橋の方からは、疑念ばかりがわいてきた。

 替え歌には、こんなくだりもある。「まとめられたり まとめたり」「助けられたり 助けたり」。この国で、しぶとく続く談合を思うと、業界と、発注元の国や自治体、あるいは政界との間には、見えない橋が架けられているかのようだ。