とある路地をのぞいてみて、小体な家が十数軒並んでいたとする。この十数軒が抱えているローン残高を合わせると、ざっと10億円にもなる……。

 以前本紙に載った、国の予算を平均的収入のサラリーマンの家計に置き換えた記事からの連想だ。月収約52万円のこの「小泉家」では、郷里への仕送り(地方交付税など)や浪費がかさんで家計は大赤字だ。毎月多額の借金をしているが、気付いたらローン残高は約7千万円に膨らんでいた。

 こんな家はなかなか立ちゆかないだろうから、「小泉家」が並ぶ「借金計10億円の路地」は仮想の世界の話だ。では国ならば立ちゆくのかといえば、そうではあるまい。未来という「永遠の担保」をどう考えるかの問題だ。それをあてにして国債というローンを際限なく繰り返してきた結果が、日本をこんな空恐ろしい姿に変えてしまった。

 このローン地獄は改めなければならない。しかしその手だてを増税だけに求めるのはおかしい。政府税調が、サラリーマン所得の控除の整理?縮小を打ち出したが、取りやすいところを狙ったようにも見える。一方、無駄遣いや不当な支出の方での改善はほとんどない。

 鋼鉄製橋梁(きょうりょう)工事を巡る談合事件の捜査が日本道路公団に及んだ。公団の年間発注額は約1千億円にのぼる。談合を長年繰り返してきたとすれば、割高になった支払いに回された国民の税金は大変な額になるだろう。談合の裏に天下りや政治介入の構造はなかったのか。

 健全な未来像が描けるかどうかの瀬戸際に、この国はさしかかっているようだ。