昨日の朝6時ごろ、出張先の宿で目が覚めた。朝刊を手にテレビをつけると、飛行機が燃えている。カナダの空港に着陸した直後のエールフランス機だという。垂直尾翼が地面近くから突き出ている。胴体は壊れたのか、ほとんど見えない。黒煙が上がる。

 大惨事かと思ったが、幸い、そうではなかった。300余人全員脱出、死者なし、けが人は軽傷、などと続報が流れた。滑走路からオーバーランし、衝突、炎上で結果がこれなら、よほど幸運が重なったのだろう。カナダの運輸相は「奇跡としか言いようがない」と述べたという。

 「奇跡」は、なぜ起きたのか。想像するのは、全員が脱出し終わるか、それに近いころまで炎が広がっていなかったということだ。

 迅速な動きと冷静さが、結果を決める。乗員の的確な指示と乗客の敏速な対応、協力が欠かせない。詳しいことは不明だが、人の動きと、出火の時期や火勢、くぼ地に突っ込んだ時の速度などの要因が掛け合わされて「奇跡」がもたらされたような気がした。

 帰京する新幹線で、猛スピードで後ろに飛んでゆく車窓の景色を見つつ思った。新幹線の速度は、ジャンボ機が滑走路に着陸する時の速度に近い。もし翼があれば飛びそうな速度で、これだけ大量の輸送を重ねながら、長年事故がない。これも、一つの「奇跡」とは言えないだろうか。

 安全確保のために昼夜を分かたず励む、数多くの人たちがいる。天災など、人知を超える事態もいつかは起こり得るが、この「奇跡」は、いつまでも続いてほしいと思った。