小さなブタにひもをつけて散歩をさせている女性を何度か見たのは、3カ月ほど前だった。高速道路の下を車が激しく行き交う東京都心の交差点を、ピンク色のブタがちょこちょこ行く。

 先月は、同じ東京の中野区で、逃げ回る3匹の子ブタが捕まった。ペットとして飼われていたガレージのフェンスのすき間から逃げ出したという。

 日本の各地で、意外な動物が町の中や他人の家で見つかる騒ぎが目につく。記事の見出しを拾ってみる。「押し入れにニシキヘビ」「イグアナが日光浴?」「庭に毒サソリ」「路上にオオサンショウウオ」「凶暴なり カミツキガメ」

 なかなかの迫力だが、動物たちにしてみれば、人間の勝手で連れてこられた場所で、何とか生きようとしているだけだ。気味が悪いとか、凶暴などと言われるのは心外だろう。

 3匹の子ブタを捕まえた警察署では、住民から様々な「ペット逃走」の通報があるため、巡回のパトカーに捕虫網を常備しているという。署の幹部が語る。「警察には困りごと処理のコンビニのような機能もあるので、通報があれば捕まえにゆく。でも捜査や事故処理などの本来の職務に支障が出ないか心配になる」

 動物は、閉じこめられるのがいやだろうし、常に閉じこめておくことも難しい。オリやかごから出ただけで周りが驚き、恐れるような動物たちにも、それぞれ命がある。もともと身近ではなかったその命が、見知らぬ人間社会の中に置かれている。そういえば、あの交差点のブタをしばらく見ない。元気にしているだろうか。