ロシアでは、今年から、革命記念日が祝日ではないただの日になった。1917年の11月7日(旧暦10月25日)に、レーニンの率いるソビエト政権が樹立された。記念日は、旧ソ連の崩壊後は「和解と合意の日」と名が変わったが、祝日としては生き残っていた。

 革命は一段と遠くなりにけりかと思うと、国民感情はそう単純ではないようだ。今月、インタファクス通信が「最も肯定的な現代史上の人物」にレーニンが選ばれたとする世論調査の結果を伝えた。54%が肯定的に評価した。次いでソ連の初代秘密警察長官が45%、最後のロシア皇帝が40%と続いた。

 プーチン政権下で経済成長が続いても、その主力のエネルギー産業に関係のない人への恩恵は少ない。貧富の差や汚職の深刻さが、革命や遠い時代への郷愁を生んでいるらしい。

 レーニンに関しては、プーチン大統領と親密な間柄の映画監督が、赤の広場の廟(びょう)で公開している遺体を埋葬せよと言い出し、論議を呼んでいる。廟にはスターリンの遺体も一時安置されていた。

 レーニンの別荘のコックで、その死後はスターリンの別荘の料理人になった人がいた。プーチン大統領の祖父だ。「なぜか粛清はまぬがれた。スターリンのまわりにいた人間で被害を受けなかったのはわずかだったが、祖父はその一人だった」(『プーチン、自らを語る』扶桑社)。

 世論調査で、スターリンを否定的に評価した人は45%いたが、肯定的な人も37%いた。遠ざかった「二大国の時代」への郷愁かも知れない。プーチン大統領は20日に来日する。