右の手のひらを、胸のあたりで下に向ける。そして水平に小さく回す。手話で、「子ども」を表す手の動きの一つだ。頭をなでるようなしぐさからは、幼い命をいとおしむ気持ちまでが伝わってくる。

 身長120センチというから、ちょうど手話で「子ども」を表す時の右手の下あたりの背丈になるのだろうか。学校からの帰りに殺害された広島市安芸区の小学1年の女子児童は、その体を折り曲げられ、家庭用ガスコンロを梱包(こんぽう)する段ボール箱に押し込められた姿で発見された。いたいけな子に対するむごい犯行に、胸が詰まる。

 事件が発生してから8日後の昨日、30歳の男が、殺人と死体遺棄の容疑で広島県警に逮捕された。県警によると、通学路沿いのアパートに住んでいる日系ペルー人で、容疑を否認したという。

 調べでは、事件の直前、容疑者が自宅の前で女児と話をしているのが目撃されたという。段ボール箱などの遺留品の捜査でも容疑者に行き当たったというが、取り調べは始まったばかりで、犯人と確定したわけではない。県警は捜査を尽くして、事件を究明してほしい。

 小1女児、小1女児、小2女児、小1男児、小2女児。昨年までの約10年間に、全国各地で下校中に子どもが殺害された事件をたどると、低学年、特に入学して間もない1年生が被害に遭う例が目立つ。例えば、せめて小学校の低学年まではバスで送迎をするといった手はないものだろうか。

 下校時の安全を百%確保することは難しい。しかし、幼い命が再び絶たれないよう、手だては探り続けたい。