滋賀県に住む山本まゆみさん(27)は、スーパーで買い物用のカートを回収するのが主な仕事である。一日中、1階から4階まで歩きまわる。回収箱にたまった牛乳パックやトレーの整理もする。夏は汗だくになり、冬は手がかじかむ。

 山本さんは知的障害がある。工場で働いた後、あこがれていたスーパーの求人に応募した。7年前のことだ。最初は、「いらっしゃいませ」や「ありがとうございました」をなかなか言えなかった。いまでは、お客さんから「よくがんばっているね」と声をかけられる。

 そうした日々をつづった「私のまわりの人達」が、内閣府で募集した障害者週間の作文の高校生?一般市民部門で最優秀賞に選ばれた。そこでは、「お店で仕事をする事がとても楽しいのです」と書かれている。

 作文には、同じ障害のある男の子が登場する。エレベーターに興味があるらしく、週末にはいつもスーパーのエレベーターの前で遊んでいる。「私は、心の中で『いつまでもここであそんでいていいよ』といいたくなります」。そう書いたが、最近、姿が見えず、心配でたまらない。

 山本さんは、どんなことにも積極的だ。月に2回、男女混成の障害者のサッカーチームで練習する。夏には、障害児のサマースクールにボランティアとして参加した。

 あす、東京で、表彰式が開かれる。山本さんは、最優秀賞の小学生、中学生とともに、自作を朗読する。「今私に悲しい事は、なにもありません。楽しいことがいっぱいあるからです」。そんな元気な声が会場に響くはずだ。