一日が無事に終わると、カレンダーの日付に丸をつけた。ただし、その日の夜にではなく、翌朝にだった。なぜなら、攻撃は決まって夜だから。イラクのサマワでの任務を終えて帰国した自衛隊員が、本紙の取材に語っていた。宿営地での緊迫感がうかがえる。

 国内で待つ人たちも、一日一日を祈るような思いですごしてきたに違いない。幸い、今のところ犠牲者は出ていない。しかし、これは隊員の細心の備えや日々の努力と幸運とによってもたらされた薄氷の無事だった。

 小泉内閣は昨日、自衛隊のイラクへの派遣期間をもう1年延ばすことを決めた。イラク戦争そのものの正当性が強く疑われ、米国内でも撤退を求める声が高まっているが、さほどの議論もないまま延長が決まった。

 藤原帰一?東大教授の言葉を借りれば、国際政治は米国による徳川幕藩体制のように動いている(『不安の正体!』筑摩書房)。「将軍はもちろんブッシュ大統領、そのブッシュにどれだけ近いか忠誠を競い合うわけです」。各国が「大名」とすれば、英国が親藩、日本は譜代だろうか。

 イラク戦争に反対した、いわば外様のドイツのメルケル首相が、ライス米国務長官を横にして記者会見で米側を批判した。「民主主義の原則や法律、国際的ルールを守らなければならない」。米中央情報局(CIA)が東欧などに秘密収容所を設け、独国内の空港を無断利用した疑惑についての発言だ。

 「将軍」への批判は広がっている。日本は付き従うことなく、撤退への道筋を独自に描く時期に来ている。