英語のpatriot(パトリオット)は、愛国者を意味する。湾岸戦争では、米軍のミサイルの名前として知られた。「愛国法」と呼ばれる、9?11テロの後にできた法の扱いを巡って、米国内で論議が起きている。

 愛国法は、テロ対策のため、捜査機関の権限の強化を認めている。ただ、電話の傍受のように、市民的自由を侵害する条項などは4年間の時限付きで、その期限が今年末だった。

 ブッシュ大統領は時限措置の恒久化を求めた。民主党に加え、一部の共和党議員も反対していたが、とりあえず、この権限を短期間延長することで歩み寄った。しかしこれとは別に、大統領が、令状なしで盗聴する権限を国家安全保障局(NSA)に秘密裏に与えていたとニューヨーク?タイムズ紙が特報し、大統領は批判にさらされた。

 民主党のファインゴールド上院議員が述べた。「大統領が勝手に法律をつくりあげることはできない。そんなことをしていては、ジョージ?ブッシュ大統領ではなく、ジョージ?ブッシュ国王となってしまう」

 チェイニー副大統領は、こう反論した。「ベトナム戦争やウォーターゲート事件で、大統領権限は制約されてしまった。しかし私たちは、大統領権限をかなりの程度まで合法的に回復することに成功した」

 「合法的な回復」に疑問が浮かぶ。令状なしの盗聴には民主主義社会を根本から覆す危険性がある。愛国法が成立したのは9?11のテロ直後の「戦時」だった。しかし「戦時」だからといって、ひそかに権限を膨らませていいはずはない。