今日から仕事始めの人も多いことだろう。ひっそりとした通りにゲタの音が響く三が日も悪くなかったが、街や職場に活気が戻るのはうれしい。戻ってきてほしくないのは交通渋滞と排ガスだが、車の動きも本格化する。

 昨日、車が絡んだ記事が目にとまった。昨年1年間の全国の交通事故の死者数が、7千人を下回ったという。1956年、昭和31年以来というから、ほぼ半世紀ぶりだ。

 「交通戦争」といわれた70年前後には年々1万数千人が死亡していたから、おおむね半減したことになる。罰則の強化や、警察、消防、地域の人たちが力を尽くしてきたことの効果が表れてきたのだろうか。しかし減ったとはいえ、昨年は6871人もの命が失われた。その家族や周囲の人たちの悲嘆は、はかりしれない。負傷者も100万人を大きく上回って、約115万6千人にのぼっている。

 運転者が、「凶器」を操っているという自覚を持って交通ルールを厳しく守るのは当然だ。その上で、人が常に車に襲われかねないような今の道や街を、そうならない形に変えてゆけないものだろうか。

 例えば、市街地では、歩道の無い道路は原則として人と自転車の専用にする。行き場を失った車をどうするのかは、地域の意向を尊重しつつ知恵を絞る。そのくらいの発想の転換を試みる時ではないか。

 政府は、年間の死者5千人以下を目標に掲げているという。死者の数値目標とは、やはりかなしい。「ひとりでも減らし、減らし続ける」を掲げて、人と車との新しい関係を探ってゆきたい。