新幹線の混乱が長引いたのは残念だが、宮城県沖の地震で犠牲者が出なかったことは不幸中の幸いだった。大きな地震に繰り返し襲われてきた地域の人たちの、日ごろの備えや、とっさの踏ん張りが利いたようにも思われる。

 それとは対照的に踏ん張りが利かなかったのが、仙台市内のスポーツ施設「スポパーク松森」の天井である。大きな揺れと同時に、割れた天井のパネル板がバラバラと落ちてきた。とっさに娘を抱きかかえてプールに飛び込んだ人の場合、頭と肩にパネルが当たったという。

 人々が服を脱ぎ、気持ちの上でも無防備になっているところに容赦なく降り注いだパネルは、凶器そのものだっただろう。新しく開いたばかりの施設で、なぜこんなことが起きたのか。巨大な天井を設ける際の安全基準や設計、施工、検査について、十分検証してもらいたい。

 柱はほとんどないのに、天井が大きく広がっている施設は珍しくはない。しかし、天井の裏側で何かとしっかりつながっているかどうかが気になることはある。

 建物の棟上げなどで、工事の由緒や建築者、工匠などを記して天井裏の棟木に打ち付ける札を棟札という。古い時代の棟札にはこんな願いが書かれている。「天下和順」「日月清明」「地下安穏」「息災延命」「家族安寧」。歌を記した棟札もある。〈鶴亀は かぎりありけり いつまでも つきぬは 山と水と流れ〉(佐藤正彦『天井裏の文化史』講談社)。

 暗くて見えにくい天井裏のようなところにこそ、安全を担う人たちは目を光らせてほしい。