書店で赤ちゃんの名前事典をめくると、外国風の名前を特集した章がある。男の子なら「吐夢(トム)」、女の子では「花連(カレン)」などが挙がる。好ましく感じる親もいれば、感心しない人もいるだろう。


 愛知県の知多半島にある美浜町と南知多町ではいま、命名話に花が咲く。人の名ではない。合併後の市名を「南セントレア市」にするかどうか。両町は先月これを新市名として発表し、内外から猛反発を浴びた。ひとまず引っこめて、結論は今月末の住民アンケートに持ちこされた。

 セントレアという新奇な言葉に接して、まず浮かんだのは南太平洋ニューカレドニアの島々、でなければ花のカトレアの変種かと思った。セントラルとエアポートを足した造語で、知多沖にできた新空港の愛称だという。まだ全国には浸透していない。

 地元ではセントレアはなお有力候補である。南知多、美南(みなん)など漢字の11案と人気を競う。斎藤宏一?美浜町長はあくまでセントレアを推す。「豊田はトヨタになり、松下はパナソニックになって飛躍した。斬新な名前で世界にPRしなければ、これからは市町村も経営できない」

 カタカナ市名の先駆けは山梨県の南アルプス市だが、ここではさほどの反発は起きなかった。合併した6町村に、もともと同じアルプス山麓(さんろく)の自治体という意識があり、提案された市名がとっぴな印象を与えなかったらしい。

 明治安田生命の調査によると、去年生まれた赤ちゃんで最も多かった名は、男が「蓮(れん)」、女は「さくら」と「美咲(みさき)」である。上位にカタカナの名前は見あたらない。