「クレームが来るのではないかと予想はしていたが、こんなに大きな波とは」。NHK前会長らの顧問辞任を発表する会見で、橋本元一会長は見通しの甘さを認めた。NHKという巨大な船のデッキに立った新船長が、さざ波程度を予想していたとは思えないが、うねりぐらいならかわせると踏んでいたのだろうか。

  波は、時に予想を超える振る舞いをする。その一つが「一発大波」だ。気象エッセイストの倉嶋厚さんの「お天気衛星」にはこうある。普通、人が海岸に立って感じる波の平均の高さは、その時に現れた波を高い順に並べて、上位3分の1までの高さを平均した値に近い。天気予報の波の高さもこれだ。しかし千波に一つは約2倍の大波になって、人や船を襲う。

  波に関する幾つかの本によると、世界で観測された最も高い波は、10階建てのビル並みの37メートルだ。1933年2月、大荒れの太平洋上で、米海軍のタンカー「ラマポ」が報告している。

  巨船「NHK」は、これまでにないような高い波に囲まれている。視聴者の目は厳しく、操船を誤った船長の交代だけでは波は鎮まらない。前船長や取り巻きの口出しを許さない、本当の意味での新しい船出が必要だ。

  この船は不沈船とも言われてきた。受信料という、他の船には無い永久固定燃料の供給があったからだ。今度の波は、燃料供給の方法の見直しも求めているようだ。

  視聴者から見て、民放では得られない価値のある放送?報道がどれだけできるのか。かじ取り次第では「一発大波」を何発もかぶりかねない。