アインシュタインに「生涯最大のあやまちをおかした」と後悔させたといわれるのが天文学者ハッブルである。1920年代に宇宙が膨張していることを確認し、当時は「静止宇宙」を想定していたアインシュタインの議論を見事に打ち砕いた。

  彼の名を冠したハッブル宇宙望遠鏡の短い生涯が終わりそうだ。近く寿命がくる部品を修理するかどうか論議されてきたが、7日発表の米予算教書に修理費は盛り込まれなかった。誘導して太平洋に落下させる「水葬」費用だけが盛り込まれた。

  大気に邪魔をされず、高度600キロの軌道から宇宙を観測する。天文学に革命をもたらすとの期待がかけられていた。しかしスペースシャトルの事故などもあって打ち上げは遅れに遅れた。90年に打ち上げられた後もトラブル続きだったが、順調に観測を始めてからは驚異の映像を送り続けた。

  星の誕生や死の現場を見せてくれた。とりわけ星が壮麗ともいえる大爆発を起こして死んでいく様は印象深い。130億光年先という宇宙の果ての銀河もとらえた。宇宙誕生まもないころの姿でもある。星が死んでつくる暗黒の穴、ブラックホールの存在も証明した。

  宇宙が刻々と変容を続けていることをまざまざと見せてくれたこの望遠鏡を三大望遠鏡の一つという人もいる。ガリレオの望遠鏡、ハッブルが宇宙の膨張を発見したウィルソン山の望遠鏡とともに、宇宙観を根本から変えた、と。

  ハッブル望遠鏡の使命はまだ終わっていない、と延命を訴える人もあきらめてはいない。その論議は米議会に移る。