朝、駅まで15分ほど歩く。急な上り坂があって息が切れる。出勤のためとはいえ、疲れてしまう。このごろ、坂にさしかかるたびに、通勤手当について考えている。電車代は出るのに、なぜ徒歩だと1円にもならないのか、と。

 こんな思いを抱くのは、国会の質疑で、歩いて通う市職員に毎月「歩行手当」を渡す市役所があるのを知ったからだ。3キロ未満は一律5700円の市のほか、1キロ以下なら4950円で、2キロは5750円と距離に応じて区切る市もあるという。

 企業には、マイカー通勤を減らすために、徒歩手当を出し始めたところがある。環境にやさしい。駐車場にかける経費も減らせる。社員の健康にもいい。だから、歩くことへの対価を一概に否定する気はない。

 だが、市役所の例は、なれ合いにしか見えない。いまどき、こんな手当を残していることに驚く。チェック役の議会は何をしているのか。と、思いきや、議会にはもっとすごい事例があった。

 たとえば、名古屋市議会だ。議員は本会議や委員会に出ると「費用弁償」の名目で、1日につき1万円もらえる。毎月の報酬など約150万円とは別枠だ。市バスと市営地下鉄の無料乗車券も支給されるのにである。議会に出席した議員に金を配る制度は、神戸市など各地にも転がっている。

 もらえるものは、もらっておこう。こんな意識は、スーツまで支給されていた、あの大阪市職員だけではないようだ。いやはや、お役所の金銭感覚には恐れ入る。ひょっとすると「坂道手当」なんてのもあったりするのだろうか。