折々に小泉首相が「食生活の大切さを子供たちに教えたい」と訴えている。施政方針演説でも2年続けて、「食育」の問題を取り上げた。そう言う首相は、どんなものを食べているのだろうか。

 朝刊の「動静」欄から首相の晩餐(ばんさん)先を拾うと、際だった傾向が浮かび上がる。とにかくイタリア料理が多い。同じ店に中2日の間隔で通うこともある。これに中華が続く。伊?中?和の輪番が基本のようだ。韓国や中東、ロシアの料理は皆無に近い。地域の偏りが目についた。

 首相官邸の担当記者によると、朝と昼は純和風という。朝食はご飯にみそ汁、大根おろし、ちりめんじゃこというのが定番で、お昼はだいたいソバらしい。「ギョーザに目がない」「生野菜は大の苦手」「たくあんやキムチには目もくれない」「カツ丼のカツは全部残す」。そんな目撃証言もある。かなり好き嫌いがあるようだ。

 平安の昔、栄華を誇った藤原道長は、過食か偏食か、長く糖尿病に苦しみ、食事療法に励んだ。ヘルシー志向の家康は麦飯を好み、臣下にも粗食をすすめたそうだ。

 戦後で言えば、食通を誇った吉田茂首相は、お気に入りの料理人を官邸に雇い入れ、美食を楽しんだ。せっかちな田中角栄氏は、カツ丼やラーメンといった手軽な品を好んだという。まさに食は人を表す。

 先月初め、首相は風邪で公務を休んだ。在任4年で病欠は初めてだ。その後も鼻水やくしゃみが止まらない。どうやら花粉症らしい。医食同源ともいう。「食育」普及のためにも、好き嫌いを見直して、どうかご自愛を。