春の交通安全運動が15日まで行われている。いつものこと、ではある。しかし、新1年生らしい子らが、ぴよぴよと聞こえてきそうな口ぶりと足取りで道を渡るのを見ると、特にこの時期は、車の運転は心を引き締めてと思う。

 交通ルールを守らなければ命が危ないと、幼い子に教え続けることは必要だ。運転する方にも、守らなければ、相手だけでなく自分の人生も危ういと思わせ続ける必要がある。しかし交通ルールを唱えるだけで万全とは言えない。

 事故を減らすには、事故が起こりにくい道をつくるという考え方もある。オランダが発祥という、人と車の共存をめざす道路「ボンエルフ」である。「生活の庭」と訳されるこの道では、たとえば車の速度を抑えるために、道の途中にハンプ(こぶ)と呼ばれる盛り上がりをつくる。

 このハンプに出合ったのは、オランダではなく、エジプトのカイロ郊外だった。突然ガクンと車体が持ち上がり、ドンと落ちた。しばらく行くとまた持ち上がる。スピードを出させないため、学校の近くなどにこうしたこぶをつくっていると聞いた。もし高速で乗り上げていたら、衝撃は相当あっただろう。

 日本にも、ハンプのある道ができている。事故が減った道がある一方で、学校の近くに作られたハンプにつまずいて転んだ人もいるという。

 事故対策には、万能薬は無い。表通りだけでなく、狭い路地をも疾走するような車に有効な「車外ブレーキ」を考案できないものか。季節ごとの安全運動ではなく、通年で取り組むべき差し迫った課題だ。