ロボットが物陰に隠れている人間を見つけ出し、狙いを定めて銃を撃つ。SF映画のような現実が、戦場の日常風景になりそうだ。米軍は、イラクでの治安対策に、地上を走行する無人兵器を投入する計画を進めている。

 ゴーカートくらいの大きさの胴体に、暗視装置付きのズームレンズを積み、機銃を装備する。荒れ地を乗り越え、鉄条網も突破する。こんなものに追っかけられたら、たまらない。

 ロボットには食料も訓練も必要ない。攻撃されても、機械がこわれるだけだ。イラク戦争の泥沼化で犠牲者が止まらず、採用兵員が募集目標を下回り続けている米軍にとっては、兵士の代用にもなる。

 愛知万博では、トランペットを吹くロボットが人気者だ。今や、お掃除ロボットも現れた。そんなニュースの中で、戦闘用ロボットの話は気持ちを暗くさせる。

 「ロボットは人をきずつけたり、殺したりできない」。漫画家の故手塚治虫さんが、半世紀前に「鉄腕アトム」の中で定めたロボット法第13条である。SF作家の故アイザック?アシモフ氏も同じ頃、ロボット工学三原則のひとつに「ロボットは人間に危害を加えてはならない」をあげた。

 ところが、現実の人間は、科学の力でとんでもないロボットをつくり出してしまった。戦闘用ロボットは、人間が遠く離れた所から操作するが、戦闘員と一般民衆との識別がちゃんとできるのだろうか。巻き添えになるイラク市民がさらに増えるのではないか。自国兵士の死傷者数のみに神経をとがらす今の戦争を象徴する兵器の登場である。