きのう1日で36人の新しい市長が生まれた。うち29人は市町村合併に伴うものだ。4月だけで、合併による首長選は約80カ所を数える。国じゅうの行政区画が、日に日に書き換えられている。

 ミニ統一地方選ともいえる選挙ラッシュは、政府の財政支援をあてにした「駆け込み合併」の多さを物語る。優遇措置が手厚いうちに、もらえる金はもらっておこう。そんな心理も働いている。

 3町村と一緒になって10万人を超えた市の市長選で、自民党の衆院議員が公共事業をいっぱいやると叫んでいた。聴衆も「4年制の大学を誘致しろ」なんて声援していた。まるで合併さえすれば、お金がわき出るかのようだった。だが、そんな見込みはどこにもない。

 合併で確実なのは、選挙のあり方が変わっていくことだ。自民党の森喜朗前首相は先日の派閥総会で言った。「これまでの町長や議員さんのような後援会のまとめ方は、大きな市の市長には不可能だ」。その結果、地縁や利権に根ざす連呼型選挙は通じにくくなる。

 この変化を加速させようと、前三重県知事の北川正恭氏らが、自治体選挙へのマニフェストの導入を呼びかけている。数値目標や達成期限を入れた公約で、住民と直接契約しよう、と。投票する人々も政策の優先順位や採否の判断を迫られる。選ばれる側と選ぶ側に「双方向の責任」が生まれる。

 もはや「お任せ民主主義」ではいられない。こんなふうに住民の意識が変化したとき、初めてその合併は成功といえるだろう。たとえ、お金が目当ての駆け込み合併だったとしても。