故意に仕掛けられたのか、あるいは事故でできたのか。全国各地の道路でみつかった謎の金属片は、ガードレールにぶつかった自動車の車体の一部という見方が強まっているようだ。

 衝突した形跡が無い所とか、金属片がねじこまれたような個所もあるという。従って故意説も捨てきれないが、もし金属片の多くが事故によるものとなれば、故意による犯行とはまた別の、深刻な問題が浮上する。

 金属片に気付かずに走り去ることもあるだろう。ガードレールにぶつかった後、届けを出さなければ「当て逃げ」の疑いが出てくる。運転者にけがもなく、車の損傷も小さいとなれば、届けを出さない方に流れてしまうのかも知れない。

 刃物のようなものが残っても、それで将来、運転者本人が傷つくことは、まずない。いつの日か、現場に潜む危険を知らずにさしかかる歩行者などにまでは思いが及ばず、あるいはそうなっても自分とはかかわりがないなどと、無責任な考えに陥るかも知れない。

 金属片は、全国の万を超える個所でみつかった。長く放置されていたらしく、さびたものもある。その群れは、「道路は車のもの」といった運転が横行する車社会に突きつけられた刃(やいば)のようにもみえる。

 この国には7千万台を超す車があり、日々走り回っている。道路を造り、管理し、事故を扱う部門で、路上の刃はどう扱われてきたのか。放置されてきたのはなぜか。そして車の業界では、車体の一部が刃になりうることをつかんでいなかったのだろうか。謎はそちらの方にも向いている。