街の至る所に、飲み物の自動販売機が立っている。品物はペットボトル入りが増えたようだが、缶や紙パック入りのほかに、ガラス瓶のものもある。

 山口県の光高校の教室で炸裂(さくれつ)した爆発物は、大人の手のひら大で、清涼飲料のガラス瓶に、花火の火薬やクギなどを詰めたものだったという。逮捕された高校3年の男子生徒が、どこで入手したのかは分からないが、身近な品物が使われたようだ。

 爆発物の作り方は、インターネット上のホームページ(HP)や掲示板に相当流布している。男子生徒も、HPを参考にしながら、市販の花火をほぐして瓶に詰めたことを認めているという。

 人が、何か「良くないこと」を考えたとする。次に、可能かどうかや方法を夢想するかもしれない。しかし、ほとんどの場合は、それまでで終わり、実行は踏みとどまるだろう。それによって、この世の中は保たれている。

 しかし、中には実行する方へと傾く場合もある。爆弾のようなものに心ひかれている時に作り方を知れば、まねをすることは十分考えられる。世界に張り巡らされたインターネットは、人を犯罪に導き、そそのかすような陰湿な面を備えている。

 梶井基次郎の「檸檬(れもん)」には、時限爆弾に見立てた檸檬を、書店の棚の本の上に置いて立ち去る場面があった。檸檬は、読み手の想像の中で炸裂し、鮮烈な印象を残す。今回、なぜ炸裂が現実の中で起きてしまったのか。踏みとどまらせる機会はなかったのだろうか。社会全体に突きつけられた問題として、丁寧に跡付けてゆきたい。