ミスターは左手を上げた。4万人を超す観衆から拍手がわき起こる。「おかえりなさーい」。きのう長嶋茂雄さん(69)が東京ドームに姿を見せた。昨春に病で倒れて以来のことだ。あの屈託のない笑顔が帰ってきた。

 アンチ巨人は多いが、長嶋嫌いはまずいない。天覧試合でのサヨナラ本塁打や、引退式での「巨人軍は永久に不滅」なんて変な日本語は、もはや伝説のように語り継がれている。背番号3の名場面を、みずからの人生の一コマと重ねて記憶に刻む人も多い。

 現役選手で活躍したのは、ちょうど高度経済成長期だ。大多数の人々が強くてかっこいいヒーローに心から熱狂した。子どもが好きなものといえば「巨人?大鵬?卵焼き」。そんな、どこか単純な時代だった。

 でも、あれは最初は「長嶋?大鵬?卵焼き」だった、と作詞家の阿久悠さんが本紙に書いていた。王貞治選手とともに「ON砲」と言われ始めた1963年に「巨人」に変わったという。

 現在の「長嶋?大鵬?卵焼き」は何だろうか。スポーツや娯楽の種類が増えて、好みも多様化した。勝利と人気を独り占めにする存在も見あたらない。あえて言えば、ヤンキースの松井秀喜、ゴルフの宮里藍選手らを並べて「松井、藍ちゃん、アイスクリーム」だろうか。

 でも、イチロー選手やサッカーのジーコ?ジャパンへの声援も熱い。子どもは回転ずしやから揚げも大好きだ。悩むほどに、いわゆる一つの長嶋さんの大きさを思った。すると草野球の打席でよく口にした言葉がよみがえった。「よばん、さあど、ながしま」

 現在の「長嶋?大鵬?卵焼き」は何だろうか。スポーツや娯楽の種類が増えて、好みも多様化した。勝利と人気を独り占めにする存在も見あたらない。あえて言えば、ヤンキースの松井秀喜、ゴルフの宮里藍選手らを並べて「松井、藍ちゃん、アイスクリーム」だろうか。

 でも、イチロー選手やサッカーのジーコ?ジャパンへの声援も熱い。子どもは回転ずしやから揚げも大好きだ。悩むほどに、いわゆる一つの長嶋さんの大きさを思った。すると草野球の打席でよく口にした言葉がよみがえった。「よばん、さあど、ながしま」