ランダムハウス英和大辞典(小学館)の2版には、「日本語から借用された英語」が載っている。英米の主要辞書や新語辞典などに見られる英語化した日本語で、約900語にのぼる。


 ツナミ、キモノ、ハラキリといった19世紀以来の古いものから、1990年代のものまでがアルファベット順に並んでいる。単語を拾っていると、それらは、日本に投げかけられてきたまなざしの変遷のようであり、日本が外に対して見せてきた姿のようでもある。


 90年代に登場したという語の中に、日本の古くからの経済のありように絡むものが二つ、目に付いた。keiretsu(系列)、そしてdango(談合)である。日本経済の強さや閉鎖性、不明朗性を感じさせる言葉なのだろう。


 日本道路公団が発注する鋼鉄製橋梁(きょうりょう)工事の談合事件を巡り、元公団理事で、受注調整をしたとされる会社の元顧問らが逮捕された。天下りした公団OBの親睦(しんぼく)団体のメンバーが、全国の公団支社から未発表の工事発注予定を集めていたという。


 dangoの根深さを思わせる事件だが、日本経団連の奥田会長は、談合問題について「全国津々浦々に行きわたっている慣習のようなもの」と、記者会見で述べた。橋梁談合事件を念頭に置いた発言とは思えないが、首をかしげざるを得ない。


 大がかりな談合の罪が解明されようとしている時である。財界トップによる他人事(ひとごと)のような言い方は、内外から誤解を招かないだろうか。「tsutsu uraura」が、借用語に載るようなことがないように願いたい。