周三 27 7月 2005
7月25日
Posted by yanmin under 天声人语
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ギリシャ神話のプロメテウスは、天上の火を人間に与えたかどで、最高神ゼウスの怒りを買う。アイスキュロスの悲劇「縛られたプロメテウス」には、山にプロメテウスを縛り付ける役のひとりとして、クラトスが登場する。ゼウスのしもべ?クラトスは「権力」を意味するという。
同時爆弾テロが続いたロンドンで、ロンドン警視庁が、「クラトス」作戦と呼ぶ新しい作戦を展開中と伝えられる。テロ狙撃チームが爆弾所持者らを撃つ場合は、下半身ではなく頭を狙うように内部規定を変えた。先日、ロンドンの地下鉄で、警官が男性に対して至近距離から発砲し、死亡させた。その男性は、爆破事件には無関係だったことが分かった。
警察は、ロンドンでの3度目の同時テロは絶対に許さないという決意で、捜査に全力を挙げていたにちがいない。市民もまた、祈るような思いで、日々を過ごしているのだろう。
疑心暗鬼という言葉が思い浮かぶ。疑心が生じると、実際にはありもしない恐ろしい鬼の形が見えるようになる。
何でもないことでも疑わしくなり、恐ろしくなる。そして、いつもなら踏みとどまるはずなのに、突き進んでしまう。かつて日本では、関東大震災で「朝鮮人が襲撃してくる」というデマが広がり、多くの人が殺害された。
クラトスには、ビアという兄弟がいて、そちらは、「暴力」を意味する。神話では、クラトスとビアは、いつも一緒だという。もとよりテロという暴力は許し難いが、「権力」は、「暴力」と同居しないよう踏みとどまるべきだろう。
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