大暑にしては過ごしやすい土曜の夕方だった。いつもの、さざ波のような前触れをほとんど感じないうちに、突然大きな揺れが来た。千葉県を震源とした23日の地震である。

 家のどこかの壁が、みしみしいっている。火を使っていないことを確かめながら、東京では、ここ10年に一度あったかどうかの大揺れだから、震度4以上だろうと推測した。

 テレビで速報が始まる。千葉方面などが震度5弱だ。大災害が予想される震度6以上の地点が見あたらないので、ひとまずほっとする。都内は震度4以下なのかと思っていると、20分以上たったころ、突然足立区が、この地震で最大の震度5強と出た。

 都庁から気象庁にデータが届くのが遅れた。区市町村の地震計などのデータは都庁に集められ、変換して気象庁に送信される。阪神大震災を機に導入したシステムで、当時は最先端で最高速だったという。都庁では、今回の地震でシステムなどの限界が表れたとして早急に抜本的な改善をすることにした。

 震度情報は、被害の予測を立てたり対応を決めたりするための基本的なデータだ。一刻を争うシステムが、大事な時に滞るとは。直下型の大地震が懸念される首都の備えとしては、はなはだ心もとない。

 今回は大災害には至らなかったが、鉄道やエレベーターなど、人を運ぶ仕組みのもろさが露呈した。できれば、日ごろから足腰を鍛えておいた方がいいのだろう。地震は、忘れていてもいなくても、いつかはやってくる。もしも、やってこないなら、それはそれで言うことはないのだから。