ドイツの「今年の言葉」に「赤?緑」が選ばれたのは98年だった。9月の総選挙で、社会民主党と90年連合?緑の党との連立政権が生まれた。両党のシンボルカラーから「ロート?グリュン(赤?緑)」と呼ばれた。

 それ以来続いてきた「赤?緑」の連立から「赤?黒」の連立へと、ドイツの政権が移った。黒は、これまで保守系野党だったキリスト教民主?社会同盟のシンボルカラーだ。メルケル党首がシュレーダー氏に代わって首相になることで、「赤」と「黒」は合意した。初の女性首相が誕生する運びだという。

 メルケル氏の51年の生が、分断から統一へのドイツの変遷と重なっていることが印象的だ。冷戦下の54年に旧西独のハンブルクで生まれたが、間もなく旧東独へ移住する。ライプチヒ大学で物理学を学んだが、89年にベルリンの壁が崩壊したころ、政治家に転身した。

 コール前首相に見いだされて閣僚となり、「コールの娘」とやゆされた。強気の姿勢は、サッチャー英元首相になぞらえて「ドイツ版?鉄の女」とも言われた。しかし壁の崩壊から16年後、国民は結果としてだが東独育ちの彼女を国を率いる立場へと押し上げた。

 03年のドイツの「今年の言葉」は「古い欧州」だった。ラムズフェルド米国防長官が、イラク戦争に批判的な独仏を非難して使った。長官にこの言葉をはかせたのが「赤?緑」の連立だった。

 「赤?黒」による国のカジ取りが始まるが、両党の「色合い」の違いもあって、不協和音も予想される。ドイツの新しい航海に注目したい。