企業恐喝事件を起こした大阪市の政治団体の事務所から、電話のかけ方のマニュアルが押収された。右翼活動に見せかけて金を脅し取るためのテクニックの一端も示されていた。

 どんな世界にも手引書があるものだと思いつつ、先ごろ手にした一枚の紙を読み直してみた。「背筋を伸ばし、アゴを引いて、まっすぐに相手の眼を見る」「常に笑顔で、丁寧な言葉遣いで、かつ『低姿勢』で」「語尾をのばしたり、あいまいに発音しない」「絶対にむきにならず、不機嫌な表情は見せない」

 アルバイト店員用みたいだが違う。これが自民党が総選挙で初当選した83人の新人衆院議員に配った「マスコミ取材への心構えについて」だ。「オフレコはありえない(口から出た言葉はすべてニュースになる)」とも書いてある。新聞記事にされた途端に発言を撤回した先輩よりも、「記憶にない」を多用するベテランを見習えと読めなくもない。

 マニュアルの話題なら、外務省にもある。新党大地代表で衆院議員に返り咲いた鈴木宗男氏のためだけに用意された。過去の「不適切な関係」に気を使って内々に作った。会食は当面は辞退する。説明要求には応じるが、強い意見表明があった場合は、官房総務課に相談するなどとある。

 いかにもマニュアル万能時代らしい。このぶんだと「小泉学校」の新人議員用には「料亭の流儀」から始まり、いずれは「大臣になるためのマニュアル」も作られるのだろうか。

 でも、彼らがいま最も読みたいのは「次の選挙を生き残るためのマニュアル」だったりして。