自民党の「新憲法草案」と、在日米軍再編の「中間報告」が相次ぎ発表された。日本の未来を大きく左右しかねない二つの方針は、「軍」を軸にして絡み合っている。

 草案は、自衛隊を「自衛軍」とした。今の憲法には、軍の暴走によって泥沼の戦争になってしまったという思いが込められている。戦後60年たったとはいえ、「軍」への改変に抵抗を覚える人は少なくないはずだ。

 「中間報告」の方は、自衛隊と米軍との「融合」を打ち出した。米軍は究極のところは米国の国益のために存在している。もしも「軍」同士になって「融合」した場合には、米政府の戦略に今以上に左右されないか。

 折しも米国では、チェイニー副大統領の首席補佐官?リビー氏が、イラクの大量破壊兵器(WMD)をめぐる情報に絡んで、偽証罪などで起訴された。補佐官は副大統領とともに「イラクがWMDを持っている」などと主張して、開戦を強硬に推進した。

 パウエル国務長官が、開戦前の国連でWMDの存在について演説した際は、補佐官が中心になって報告を長官に提出した。結局WMDは見つからず、パウエル氏は今秋、この演説を「人生の汚点」だと述べた。ブッシュ政権にとっても大きな「汚点」だが、開戦をいちはやく支持した小泉首相はどう受けとめたのだろうか。

 内閣が改造された。小泉氏にとっては最後の内閣かも知れないが、日本や世界の歩みに、終わりはない。日米関係も重要だが、世界はさらに大きく、重い。やみくもに、「軍」や「融合」の方に傾いてはなるまい。