東洋大が募集し、約5万8千首が寄せられた「現代学生百人一首」の入選作を読む。三十一文字をつづりながら、自分や周りや世界を見つめている姿が目の前に浮かんでくる。

 〈私って何なのかしらと問う鳥に貴方は貴方と言い放つ空〉中2?甲斐菜摘。〈未来というワケのわからぬ存在を私の形に切り抜いていく〉高3?武井怜。〈喜?哀?楽仮面の上に描くたび己の顔をうしなう道化師(ピエロ)〉中3?増田菜穂子。

 学びの中の一瞬をうたう。〈図書館の窓よりトンボ迷い込み草野心平に留まり、また飛ぶ〉高3?佐々木勇翔(ゆうと)。〈暴れだす牛の鼻環(はなかん)必死でつかむ感覚頼りの胃汁の採取〉高3?福島麻衣。

 家族へのまなざしがある。〈花型のにんじん入りの弁当が昨夜の喧嘩を反省させる〉高1?代島千沙都。〈病室で流した涙の理由はね痛みじゃなくて母のぬくもり〉高2?高橋麻未。戦後60年がたった。〈祖母が言う戦地に向かう祖父の背を涙こらえて送った日のこと〉高2?富樫拓也。選外佳作からも一首。〈悲劇の日、忘れられない60年止まったままの11時2分〉高2?女子。

 人と人のさまざまなつながりがある。〈こんなにも明るく晴れた天気でもみんなケータイうつむきかげん〉高1?山崎純平。〈なずなですあつかいにくい子なのですけれどわたしはあいしてるのです〉中2?福山なずな。

 若い感性に力強さが宿る。〈刈られても刈られた分だけまたのびる芝のあおさに力みなぎる〉中2?鈴木奏慧(かなえ)。〈人生のブランコたまにはバックする大きく前へこぎ出すために〉高1?田中結。