六本木ヒルズは、東京の都心の坂の上にある。中心の森タワーは54階建てで、高さが238メートルある。肩をいからせた巨大な甲冑(かっちゅう)のような姿は、遠くからでも目に飛び込んでくる。その38階にあるライブドアを、東京地検が家宅捜索した。

 強制捜査を受けたからといって、必ずしも罪を犯したと決まったわけではない。しかし、世間の注目を集め続けてきた企業に対する今回の捜索の陣容には、検察の意気込みの強さがうかがえる。

 容疑の一つとして「風説の流布」があげられた。相場を変動させたり、売買で利益を得たりする目的で意図的な情報を流すことは、証券取引法で禁じられている。ライブドアの関連会社が、企業の買収に絡んで偽りの事実を公表した疑いがあるという。

 堀江貴文社長は、ヒルズの38階に入居した理由について、東京タワーを見下ろせる唯一の場所だからと自著に書いている。「この絶景を毎日見られることを想像してみてほしい。地上をこの手で握りしめたような気になる。そして、ふつふつと熱いものがこみ上げてくる。『絶対に天下を取るぞ』と」(『プロ野球買います!』あ?うん)。

 インターネットの関連企業の成長はめざましく、ライブドアは、その中心にいた。劇的に膨張してゆく過程で、利益の追求と資金集めに走るあまり、法を無視するようなことがあったのだろうか。

 家宅捜索は、夜を徹して行われた。それは、四方八方からの多くの目にもさらされていた。「天下取りの塔」で、何が起きていたのか。捜査の行方を見守りたい。