開催中の愛知万博で「サツキとメイの家」が人気だという。映画『となりのトトロ』で主人公の姉妹が暮らした昭和30年代の民家が、映画そのままに再現されている。
 映画を文庫化した『小説となりのトトロ』(徳間書店)を開くと、姉妹があの家に引っ越すのは、5月のある朝のこと。家財とともに姉妹を車の荷台に積んで、父が陽気に歌う。「5月に5月(サツキ)と5月(メイ)を乗せて行くぞ」。サツキがもちろん皐月(さつき)なら、メイは英語で5月を指す。5月が三重奏する軽やかな引っ越し場面だが、映画では割愛された。
 庭先でメイが、クスノキの巨木を見上げて不意にくしゃみをする場面がある。光に目を射られたからだ。たしかに、日差しが夏めくこの季節、空を仰ぐとくしゃみが飛び出すことがある。寒くもないのになぜなのだろう。
 くしゃみやせきに詳しい旭川医大助教授の野中聡さんに尋ねた。原因は「神経の誤作動」という。目で知覚した「まぶしい」という刺激が、脳に伝わる途中、なぜか鼻からの刺激と受け取られる。
 昼間に映画館から外へ出たときなどにも起こる。2~3割の人に自覚症状があるが、深刻な症例はまずない。野中さんによると、米医学界ではこれを俗にアチュー症候群と呼ぶ。日本ではハクションだが、あちらではアチューと響くそうだ。
 ほかの国々ではハクションをどう言うのか、本紙の海外支局に聞いた。韓国ではエッチュイ、フランスだとアチュウム。ロシアがアプチヒーで、エジプトはアータスだという。人類共通の生理現象なのに、ずいぶん違うものだ。