調査票が燃やされたり、調査員が多数辞退したりと、今年の国勢調査は騒ぎが相次いだ。多くの人がプライバシーに敏感になる中、これまでのような調査の仕方や調査内容では立ちゆかないかもしれない。

 「国勢調査」は英語のcensus(センサス)を訳したものだという。語源は古代ローマの時代にさかのぼり、センソールという職名をもった市民登録や税金などを担当する役人が行った人口調査を意味している(「国勢調査のはなし」80年に国が発行)。

 1920年、大正9年の10月に実施された最初の国勢調査ではこんなポスターが作られた。「国勢調査は社会(よのなか)の実況(ありさま)を知る為に行ふので課税(ぜいきん)の為でも犯罪(ざいにん)を捜す為でもありません」

 それから80年たった前回00年の調査の後、総務省が1万余世帯を対象に調べたところ、「答えたくない質問事項」は「勤め先の名称?事業の種類」が一番多く3割強あった。以下、最終学歴などを尋ねた「教育」、「家計の収入の種類」と続く。

 調査票を前にして、戸惑う様が浮かぶ。総務省は「勤務先の名称」は正確な産業分類をするために必要と説明する。しかし、その結果が具体的にどう行政に利用されているかについては「把握していない」

 1回目の調査では「宣伝歌謡集」もできた。「調査する日の近づかば成たけ旅行(たび)をせぬものぞ/火の元用心第一に伝染病にも気をつけよ/是等の禍起りなば調査の妨げ如何(いか)計り」。国家の一大行事だった時代は、すでに遠い。あり方を広く見直し、新しい時代に合った調査にしてゆきたい。