米大リーグ入りを決めた城島健司捕手の英語力を、米紙が相次いで取り上げた。「試合中に話すのは捕手の大切な仕事。英語が得意でない日本人に務まるのか」と。

 英語に定評のある長谷川滋利投手も、渡米直後は言葉の壁に泣いたそうだ。英語に疲れるとトイレに逃げ込み、日本語の本を読みふけった。それが今や通訳ぬきで会見し、英語習得法を説く本まで出版した。

 中国の卓球リーグに飛び込んだ福原愛さんは、みごとな中国語を操る。発音も本格的で、地元のテレビ番組に出演して人気が高まった。ゴルフの宮里藍さんも英語で堂々と応じている。

 逆に日本へ来た外国人選手はどうか。たとえば角界は徹底した日本語漬けで知られる。朝青龍関も入門してすぐは言葉に苦労した。顔色の悪い兄弟子をいたわるつもりで「関取、顔悪いっすね」と声をかけ、猛烈に叱(しか)られている。

 予習なしで来日し、通訳はおらず、日本語学校にも通わない。それなのにみるみる上達するのはなぜか、と早大教授の宮崎里司さんは外国人力士や親方ら約30人に面談した。わかったのは、相撲界がサブマージョン式の言語教室になっていたことだ。英語で水没や浸水を意味する。泳ぐかおぼれるか、異言語の海に手荒く放り込む。

 英語の海にこぎ出せば、誰にもトイレに隠れたくなる日があるだろう。けれども大リーグは弁論大会ではない。日米の野球に通じたバレンタイン監督も「形容詞の用法や動詞の時制が理解できても捕手の仕事には役立たない」と米紙に語っている。心配するには及ばないようだ。