周一 16 1月 2006
1月16日
Posted by yanmin under 天声人语
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朝晩めっきり冷え込む季節は体調を崩しやすい。ちょっと風邪気味かなと思った先日、ホームセンターの家庭用品売り場で、子ども時代に使っていた湯たんぽと再会した。
カメの甲羅のようなブリキ製のあれである。昭和30年代には、今のような軽くて暖かい寝具は出回っていなかったから、湯たんぽは欠かせなかった。ただし栓が小さいので熱湯を入れるのは難しい。毎晩母に入れてもらっていた。ネルの袋も母の手作りだった。
作家の故向田邦子さんも回想している。「湯タンポは翌朝までホカホカとあたたかかった。自分の湯タンポを持って洗面所にゆき、祖母に栓をあけてもらい、なまぬるいそのお湯で顔を洗うのである」(『父の詫(わ)び状(じょう)』)。湯たんぽの周りでは、時間がゆっくり流れていた。
もともとは中国伝来である。清代の小説『紅楼夢』にも登場するという。日本でも元禄期には使われていたらしい。かつては陶製だったが、昭和初期から金属製が普及した。高度成長期に広まったガスや電気の暖房器具に追われて、ほとんど姿を消していたものの、今また注目されている。
店頭には、ゴム製やプラスチック製も並ぶ。湯たんぽは空気を乾燥させないので、肌にやさしい。電気の消し忘れもない。こうした様々な効用が見直されている理由だろう。
湯たんぽという名前も、とても温かそうだ。「たんぽ」とは、器をたたいたときの音から来たという説と、中国語で湯たんぽを意味する「湯婆」の唐音が語源だが、それが忘れられて、「湯(ゆ)」が付け加えられたという説がある。
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